紙 版
言語的マイノリティの生徒を受け入れる公立高校での実践と工夫にみる母文化や母語を尊重する教育と手厚い支援の成果。
| 出版年月 | 2026年01月25日 |
|---|---|
| ISBN | 978-4-87259-845-2 C3037 |
| 判型・頁数 | A5判・336ページ |
| 定価 | 本体5,400円(税込5,940円) |
| 在庫 | 未刊・予約受付中 |

「日本語ができるようになればすべてが解決されるだろう」という誤解と現実
言語的マイノリティの生徒が直面する課題は教育環境や社会的背景といった要素を含んで多岐にわたるにもかかわらず、日本語能力の不足が主な要因であると思われがちである。
本書では、中国、ベトナム、ネパール、フィリピンなどにルーツをもつ言語的マイノリティの生徒を受け入れる公立高校での多言語教育の実践と工夫を、教師・生徒のインタビューとともに紹介する。母文化や母語を尊重する教育と手厚い支援が、生徒たちをどのように包摂し、育んでいるのか。その実態を明らかにする。
さらに、アメリカの高校における調査から異文化を背景に持つ生徒の孤立や教師・生徒のすれ違いを描き出し、今後の日本の教育現場での活用に向けて、言語的マイノリティ支援システムや言語アセスメントシステムの構築、孤立を防ぐための居場所づくり、教師の多様性や分掌間の連携など具体的な提案を行う。
異なる背景を持つ生徒の能力が正当に評価される社会を実現し、真に自由な選択のもとで人生を歩むことができるような多様性を尊重した共生社会を構築するための示唆。
はじめに
第1部 研究背景及び問題の所在
第1章 言語と教育の交差点:日米における言語的マイノリティの過去と現在
1 言語的マイノリティ生徒の現状:日米の比較を通して
2 なぜ教育現場においては「言語」が問題となったか
3 言語的マイノリティへの教育施策:日米の比較を通して
第2章 先行研究
1 教育社会学の観点から
2 バイリンガル教育学の観点から
3 共生社会の構築に向けて:社会言語学の観点から
4 本書の目的と研究課題
第3章 研究の方法
1 調査概要
2 調査方法
3 分析方法
第2部 高校での多言語使用の実践:実態と課題
第4章 日本語教育の実践
1 A 高校における日本語教育の位置付け(システム)
2 授業におけるコミュニケーションの実態
3 共に学ぶ場をつくる日本語教育:多文化社会を拓く実践の可能性
第5章 母語教育の実践
1 A 高校における母語教育の位置付け(システム)
2 授業におけるコミュニケーションの実態
3 挑戦する母語教育:ことばと文化を再編する学びの現場から
第6章 一般教科の取り出し授業の実践
1 A 高校における一般教科の取り出し授業の位置付け(システム)
2 授業におけるコミュニケーションの実態
3 一般教科における取り出し授業の光と影:言語・文化・居場所の再考
第7章 教師と生徒の意識
1 生徒の意識
2 教師の意識
3 交差するまなざし:言語的マイノリティの生徒と教師の語りから
第8章 アメリカ合衆国・カリフォルニア州の政策と実践
はじめに
1 カリフォルニア州における言語教育政策をめぐる論争
2 研究概要
3 カリフォルニア州のB 高校での教育実践
4 教師と生徒の意識に基づくB 高校の実態と課題
5 言語的・文化的多様性への教育的応答:日米二校の実践比較
第3部 結論
第9章 教室という越境空間:言語がひらく共生の可能性
1 教室内における多言語使用の可能性: トランスランゲージングの視点から
2 教師と生徒の意識の差異:日本語教育と母語教育を例に
3 「合理的な配慮」とは何か
4 教育現場における排除と包摂:共生のあり方とは
5 日本の教育現場の可能性:カリフォルニア州のB 高校との比較から
6 言語的マイノリティと公教育の未来を考える
王 一瓊(オウイッケイ)
大阪大学大学院言語文化研究科(現:人文学研究科)
言語文化専攻(博士:言語文化)
大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター特任助教を経て、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科講師。専門は社会言語学、言語社会学、多文化共生論。











