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多文化社会の学校と教師教育

ノルウェーと日本の国際比較研究から

北山夕華橋崎頼子 編集/今井貴代子川口広美久保美奈南浦涼介村田一朗TonyBurnerTuvaSkjelbredNodelandÅsmundAamaas

紙 版電子版

日本とノルウェーとの比較研究を通じ、多文化社会における学習者の多様性に応じた教育を可能にする教師教育のあり方を探る。

出版年月2024年03月31日
ISBN978-4-87259-798-1 C3037
判型・頁数 A5判・274ページ
定価本体3,600円(税込3,960円)
在庫在庫あり
内容紹介
目 次
著者略歴

「多文化化」する教室の中で、子どもたちの多様性に応じられる教育とは―多文化社会・ノルウェーとの比較から日本の教師教育を再考する。

近年、ニューカマー移民の増加をはじめとして日本社会の「多文化化」は誰の目にも明らかになりつつある。学校教育においても様々な文化的・民族的背景を持つ学習者の姿が可視化されるようになり、その多様性に応じた教育が求められている。
一方、従来の日本の学校教育では単一民族国家観を前提とする「国際理解教育」や全ての子どもを「同じように扱う」ことを理想とする平等主義的な学校文化が根強く浸透している。このため教育現場におけるさまざまな個別のニーズを持つ子どもへの対応の遅れが指摘されるとともに、教育現場の多文化に対応した体系的な教師教育の整備も進んでおらず、現場で個別の実践が模索される段階にとどまっている。
このような状況に対し、本書では、教育の多文化化を直視し、かつ新自由主義的な「グローバル化」を無批判に受容するのではなく、「社会正義」の視点から教育における不平等や不公正の是正に取り組む教師を育てる教育のあり方を考察する。

社会正義を志向する教師教育を展望するにあたり、本書は日本とノルウェーの現地調査に基づく国際比較研究を扱う。ノルウェーは長らく先住民や少数民族に対し日本と似た同化政策を取ってきたが、移民や難民の受け入れ増大を受け、日本より一足先に多文化社会に舵を切った経緯を持つ。本書では、日本・ノルウェー両国の教育政策・教師教育政策の整理を行うとともに、教員養成課程学生への質問紙調査、教師教育者へのインタビュー、授業観察、学校への訪問調査など現地調査・データ分析を幅広く実施し、両国の教師・教師教育者の戦略や葛藤、問題意識や関心を丁寧に考察するとともに、彼らが制度と実践の矛盾の中で社会正義の実現のために試行錯誤する姿を克明に描き出した。

両国の比較を通じ、日本の教師教育の課題や可能性、その改善に向けた知見や示唆を引き出すことが本書の目的である。

第1部 多文化社会の教師教育をめぐる問い 
序章 多様性と社会正義の視点から教育をとらえ直す
第1章 多文化社会の教育をめぐる視点と論点
第2章 ナショナル・アイデンティティの認識 ―日本とノルウェーの大学生へ調査から―

第2部 日本
第3章 多様性に応じる教師教育の政策動向と課題
第4章 多様性の視点を取り入れるための教師教育者の戦略
第5章 教師教育者の授業実践―寛容と公正およびケアリングの視点から―

第3部 ノルウェー
第6章 多文化化するノルウェーの社会と教育
第7章 教室における多様性の認識と実践―批判的視点からの検討―
第8章 移民集住地域の学校の実践―多文化教育の視点から―
第9章 文化的多様性に応じる教師教育

第4部 国際比較からみる日本への示唆
第10章 社会正義を志向する教師教育―ノルウェーと日本の教師教育者の語りから―
終章 多文化時代の教師教育の構想に向けて

北山夕華(キタヤマ ユウカ)

大阪大学人間科学研究科教授。
博士(人間科学)。サウスイースタンノルウェー大学客員研究員等を経て2023 年より現職。専門は教育社会学・シティズンシップ教育。主な著書・論文に「多様性に応じる教師教育の実践と省察―社会正義を志向する主体としてのノルウェーの教師教育者に注目して―」(『教育学研究』第90 号第2 巻,2023 年),『英国のシティズンシップ教育― 社会的包摂の試み』(早稲田大学出版部,2014 年),Identities, Practices and Education of Evolving Multicultural Families in Asia-Pacific(共著,Routledge,2022 年), Multiculturalism in Turbulent Times(共著,Routledge,2021 年)

橋崎頼子(ハシザキ ヨリコ)

奈良教育大学教育学部教授。
博士(学術)。専門は,国際理解教育,シティズンシップ教育。主な著書・論文は,「多様な他者の声を聴き価値を創り出す道徳教育実践――ケアリングの視点から」(『国際理解教育』第26 号,2020 年)。「欧州評議会における相互文化的対話を用いたシティズンシップ教育への新展開:社会的分断の中での社会統合に向けた手立てとして」(共著,『カリキュラム研究』第31 号,2022 年)。『国際理解教育を問い直す』(共著,明石書店,2021 年)。

今井貴代子(イマイ キヨコ)

大阪大学社会ソリューションイニシアティブ招へい教員。
専門は教育社会学,批判的教育学。主な著作に,「外国人生徒の学校経験にみる制度的エージェントとの結びつき―『特別枠校』卒業生の事例から」(『異文化間教育』第57号,2023 年),『外国人生徒と歩む大阪の高校―学校文化の変容と卒業生のライフコース』(共著,明石書店,2023 年)。

川口広美(カワグチ ヒロミ)

広島大学大学院人間社会科学研究科准教授。
博士(教育学)。滋賀大学講師・准教授を経て,2017 年より現職。専門はシティズンシップ教育,社会科教育。主な著書・論文は,『イギリス中等学校のシティズンシップ教育―実践カリキュラム研究の立場から』(風間書房,2017 年),「社会変容に対応するシティズンシップ教育カリキュラム構成法の革新」(『社会科研究』第73 号,2010 年),「能動的シティズンシップをどのように評価するのか―イングランドのシティズンシップ教育の事例を手掛かりに」(『教育目標評価学会紀要』第26 号,2016 年)。ほかに,“Social Studies Education in East Asian Context”(共著,Routledge,2021 年)など。

久保美奈(クボ ハルナ)

愛媛大学教育学部附属インクルーシブ教育センター特定研究員。
博士(教育学)。専門は社会科教育×インクルーシブ教育,社会正義教育など。主な論文は,久保美奈(2023)「中学校社会科公民的分野の教科書にみられる『障害メッセージ』の特質と課題―より包摂的な社会科教育をめざして―」(『社会科研究』第97号)。

南浦涼介(ミナミウラ リョウスケ)

広島大学大学院人間社会科学研究科准教授。
博士(教育学)。日本語教師,小中高の講師,山口大学教育学部講師,東京学芸大学教育学部准教授を経て2023 年より現職。専門は外国人児童生徒等教育,教育法法学,日本語教育学,教科教育学。主な著書・論文は『外国人児童生徒のための社会科教育―文化と文化の間を能動的に生きる子どもを授業で育てるために』(明石書店,2013年),「民主化のエージェントとしての日本語教育―国家公認化の中で『国家と日本語』の結びつきを解きほぐせるか」(共著,『「国家」―教育学年報12』,2021 年),『言語教師教育論―境界なき時代の「知る」「分析する」「認識する」「為す」「見る」教師』(共訳,春風社,2022 年)。

村田一朗(ムラタ イチロウ)

大垣市立北中学校教諭。
広島大学大学院人間社会科学研究科博士課程前期修了。専門は,社会科教育,性の多様性,社会正義。主な著書・論文は,村田一朗・小栗優貴・白石愛(2021)「性的マイノリティの包摂を目指した教科横断単元の開発研究―社会科・保健体育科との協働開発―」(『日本教科教育学会誌』第44 号第2 巻)。

TonyBurner(トニー バーナー)

サウスイースタンノルウェー大学教授。
博士(英語教育学)。最近の著作にinclude“Teachers’ multilingual beliefs and practices inEnglish classrooms : A scoping review.”(共著,Review of Education, Vol. 11, issue 2,2023 年),“Teacher qualifications, perceptions and practices concerning multilingualism at a school for newly arrived students in Norway”(共著,International Journal of Multilingualism, vol. 19, 2022)。

TuvaSkjelbredNodeland(トゥーヴァ シェルブレッドヌーデランド)

サウスイースタンノルウェー大学准教授。
博士(教育社会学)。最近の著作に,ノルウェーの社会科教科書であるArena シリーズのほか,A Battle over Children : Nonformal Education in Norwegian Uniformed Children’s Organisations, 1910-1960(Acta Universitatis Upsaliensis, 2023)。

ÅsmundAamaas(オースムンド オーモース)

サウスイースタンノルウェー大学准教授。
最近の著作に,“Engaging with indigenous perspectives in mainstream Norwegian teacher education : Collaborative autoethnography as a path toward decolonial indigenization”(Diaspora, Indigenous and Minority Education, 2023)や,教師教育向けの教科書である Refleksjonsverktøy for arbeid med samiske perspektiv og urfolksperspektiv i lærerutdanningen [教師教育においてサーミ人と先住民族の視点を取り入れるための省察ツール]。

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