全ての書籍 人文科学/芸術/歴史・地理 シャンソン・フランセーズの諸相と魅力
紙 版電子版
シャンソン作家・歌手・西洋史・文化・音楽学・フランス文学・美学・言語学など幅広い視点から「シャンソン」に迫る。
出版年月 | 2024年02月28日 |
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ISBN | 978-4-87259-790-5 C3073 |
判型・頁数 | A5判・332ページ |
定価 | 本体6,300円(税込6,930円) |
在庫 | 在庫あり |
日本においては、シャンソンの学術研究はいまだ立ち遅れていると言わざるを得ない。宝塚歌劇団のレビューやフランス映画の主題歌や挿入歌、あるいはラジオやレコードなどを通して日本に紹介されて以来、シャンソン・フランセーズは日本独自の音楽ジャンルとして発展し変容をとげたため、本来それが有していた歴史性や多様性を失い、フランスへの憧憬とともに、日本語に翻訳された歌詞(しばしば日本人の感性に合わせて大幅に書き換えられている場合もある)でうたう多くのシャンソン歌手や愛好家を生み出してはきたものの、サブカルチャーとしての側面がより際立つ結果となり、学術研究の対象とはなり得なかったからである。それゆえ20世紀以降のフランスの歌手や歌詞を紹介した書籍や雑誌などは多々見うけられるが、いずれも学術研究の水準に達しているとは言い難い。
このような状況のもと、日本におけるシャンソンの学術研究の基礎を築き発展を目指して2002年に立ち上げられたのが「シャンソン研究会」である。フランスにおけるシャンソン文化の歴史と内実を様々な角度から考察し、フランス文化史のなかに正当に位置づけ、かつ、それがどのような役割を果たしてきたのかを学際的に明らかにするため、これまでフランス文学、フランス語学、西洋史学、美学、音楽学など多彩な分野の研究者や専門家を本研究会に迎え入れてきた。
研究会設立20周年を機に、これまでの会員の優れた論考をまとめ、日本におけるシャンソンの学術研究の発展に寄与するため、日本学術振興会の研究成果公開促進費を獲得して出版されたのが本著である。ここに収められた論考は、19世紀から今日までのシャンソン・フランセーズをめぐる様々な視点からのアプローチであり、いずれも日本においてはほとんど扱われていない先駆的研究の数々である。本書は全部で11章からなっており、一定の形式上の統一を図った上で、文体については論者個々の判断に任せた。それがかえって個性豊かな論考となり、多彩なテーマとともに単調さを防ぎ読む楽しみを増しているとも言えよう。本書を通して読者諸氏が、民衆文化の花束たるシャンソン・フランセーズの魅力とその実相の一端に触れられんことを切に願うものである。
(文責編者)
はじめに
第1 章 「民衆のシャンソニエ」ルイ・フェストーに関する一考察
第2 章 19 世紀フランスの歌姫ポリーヌ・ヴィアルド
第3 章 街角の音楽師 ― 19 世紀を中心に―
第4 章 フランスの子ども歌の誕生
第5 章 子ども歌と小さな虫たち
第6 章 シャンソン「サクランボの実るころ」―Le temps des cerises ―
第7 章 「シャ・ノワール」におけるシャンソンの担い手をめぐる諸問題
第8 章 マルグリット・モノの「シャンソン」―「シャンソン」の成立における芸術音楽の影響をめぐって―
第9 章 バルバラ、父、そして母
第10章 バルバラの『ゲッティンゲン』(1965年)―歌の成立をめぐる仏独交流―
第11章 シャンソンの闇鍋 ― 対訳の試み12 篇―
あとがき
吉田正明(ヨシダ マサアキ)
信州大学名誉教授。
研究テーマ:19世紀フランス詩、シャンソン文化史。
本間千尋(ホンマ チヒロ)
東京藝術大学音楽学部教育研究助手。学術博士(東京藝術大学)。
研究テーマ:18世紀末から19世紀前半におけるパリのシャンソン文化。
村田京子(ムラタ キョウコ)
大阪府立大学名誉教授。文学博士(パリ第7 大学)。
研究テーマ:19世紀フランス文学、ジェンダー論。
中村啓佑(ナカムラ ケイスケ)
追手門学院大学名誉教授。
研究テーマ:フランス民衆のスペクタクル。
金山富美(カナヤマ フミ)
島根大学学術研究院人文社会科学系教授。
研究テーマ:フランス女性研究、フランス文化論。
三木原浩史(ミキハラ ヒロシ)
神戸大学名誉教授。
研究テーマ:シャンソン・フランセーズの歌詞分析、ロマン・ロランの作品論。
岡本夢子(オカモト ユメコ)
滋賀県立大学人間文化学国際コミュニケーション学科講師。言語学文学翻訳学博士(リ
エージュ大学)。
研究テーマ:シャ・ノワール。
樋口騰迪(ヒグチ マサミチ)
大阪大学博士後期課程単位取得満期退学。
研究テーマ:シャンソンの成立をめぐる比較音楽学的考察、キリスト教と音楽思想。
高岡優希(タカオカ ユキ)
大阪大学等非常勤講師。言語文化学博士(大阪大学)。
研究テーマ:シャンソン・フランセーズ研究、フランス語教育。
中祢勝美(ナカネ カツミ)
天理大学国際学部准教授。
研究テーマ:ドイツ文学、ドイツ地域研究・独仏関係史。
戸板律子(トイタ リツコ)
広島大学等非常勤講師。
研究テーマ:シャンソン・フランセーズ研究。
正誤表
本書に正誤表の通り訂正がありました。お詫び申し上げます。
9784872597905seigohyo.pdf