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生成される平和の民族誌

ソロモン諸島における「民族紛争」と日常性

藤井 真一

紙 版電子版

ソロモン諸島ガダルカナル島で、紛争の渦中でも暴力や敵対意識が表面化せず、日常生活の中に平和が生成された背景とは。

出版年月2021年06月30日
ISBN978-4-87259-737-0 C3039
判型・頁数 A5判・324ページ
定価本体5,600円(税込6,160円)
在庫在庫あり
内容紹介
目 次
著者略歴

太平洋戦争の激戦地として知られるソロモン諸島ガダルカナル島は、21世紀の幕開けと相前後して新たな武力紛争「エスニック・テンション」に見舞われた。島の出身者同士も集団意識を共有せず、武装集団と島民との間に温度差があるために紛争に加担する度合いにも差が生じるなかで、贈与儀礼によって生存を確保するという特徴的な慣習も存在していた。彼らがどのように紛争処理を行ってきたかを分析したうえで、紛争後の社会再構築における最重要課題である和解と関係修復の経緯を論じる。戦争や暴力は非日常世界のものか?紛争下を「普通」に生き抜いた人々の生存戦略から、平和と紛争の共時的関係と紛争解決のダイナミズムを浮き彫りにする。

序章  紛争に着眼した平和の人類学に向けて



第1節 本書の目的 

1 調査研究の目的 

2 「平和」という民俗語彙を考える―本書の着想 

3 ソロモン諸島の諸言語にみる「平和」概念 

第2節 調査方法 

第3節 本書の構成 



第1章平和の人類学とメラネシア民族誌



第1節 平和と暴力の研究 

1 本書における平和の定義 

2 平和の人類学の系譜 

3 平和の人類学の到達点と課題

第2節 平和論と交換論の交差点 

1 メラネシアの紛争・平和研究 

2 ソロモン諸島における贈与交換の機能 



第2章ガダルカナル島北東部の民族誌的概観



第1節 調査地概要 

1 ソロモン諸島 

2 ガダルカナル島 

3 ドク社会、ガオバタ地区とタシンボコ地区 

第2節 社会構造 

1 ケーマとママータ 

2 キリスト教 

第3節 生計活動 

1 自給作物と漁撈、家畜の肥育 

2 換金作物の取り扱いと賃労働 

第4節 住環境と地理空間 

1 住環境、とりわけ小屋に関わる資料 

2 地理空間、とりわけ畑に関わる資料 

第5節 儀礼や饗宴において重要な価値付けがなされるもの 

1 貝貨 

2 ブタ 

3 木製の黒い器「ポポ」 

第6節 地域的な特徴 



第3章歴史の中のソロモン諸島



第1節 太平洋戦争以前 

1 ヨーロッパとの接触

2 植民地統治時代の政治経済史 

第2節 太平洋戦争 

1 太平洋戦争に対するソロモン諸島民の関わり方 

2 ジェイコブ・ヴォウザ、太平洋戦争の英雄 

3 太平洋戦争中のガダルカナル島の人びと 

第3節 太平洋戦争後の社会変化

1 ホニアラの建設 

2 アブラヤシ・プランテーションの操業 

第4節 独立後の政治経済的発展 

第5節 ホニアラとガダルカナル島北東部の特殊性 



第4章「エスニック・テンション」



第1節 歴史的背景 

1 紛争前史 

2 「エスニック・テンション」の直接の引き金 

第2節 「エスニック・テンション」の経過 

1 紛争の勃発 

2 紛争の激化 

3 マライタ側からの報復 

4 和平合意の無力化 

5 介入部隊の駐留開始と武力紛争の終息 

第3節 「エスニック・テンション」の社会的要因と影響 

1 社会的要因 

2 「エスニック・テンション」がもたらした影響 

第4節 島単位の集団意識の芽生え 



第5章  紛争との関わり方



第1節 「エスニック・テンション」の時期区分 

第2節 積極的な加担と消極的な関与、否定的な関係 

1 ガダルカナル側武装集団の二つの系統 

2 積極的に加担した人びと

3 消極的に関与した人びと 

4 否定的な関係を取り結んだ人びと

5 ガダルカナル島北東部における生存戦略 

第3節 紛争を(やり)過ごす方法 

1 マライタ系住民たち 

2  紛争渦中を過ごす

 

第6章  紛争処理の多様な試み



第1節 伝統的な紛争処理 

1 コンペンセーションとは何か 

2 独立後のさまざまなコンペンセーション

3 諸事例の比較検討 

4 なぜ中央政府に対して要求するのか 

第2節 国家主導の紛争解決 

1 伝統的和解儀礼 

2 国民統一・和解・平和省 

第3節 国際社会による紛争解決への関与 

1 国際的な無関心

2 太平洋島嶼社会による介入 

3 ソロモン諸島地域支援ミッションの派遣 

第4節 さまざまな次元における紛争処理のあり方 



第7章 和解と関係修復へ向けて

第1節 真実委員会 

1 紛争処理としての真実委員会 

2 真実和解委員会における文化的要素の取り扱い 

第2節 ソロモン諸島真実和解委員会 

1 設立の背景 

2 真実和解委員会の活動 

3 証言聴取という活動

第3節 真実委員会と在来の紛争処理の緊張関係 

1 ソロモン諸島における在来の紛争処理と文化的規範 

2 TRCの証言聴取が直面した困難 

3 証言聴取活動と文化的規範との競合を乗り越える工夫 

4 二つのコンペンセーションの捉え方 



終 章 平和生成の共時的・通時的分析

第1節 前章までの要約 

第2節 平和と紛争の動態的関係

1 紛争という日常と避難行動―平和と紛争との共時的な関係 

2 紛争解決のダイナミズム―平和と紛争との通時的な関係

第3節 日常的な平和生成 

あとがき 

藤井 真一(フジイ シンイチ)

1981年、奈良県生まれ。

大阪大学大学院人間科学研究科人間科学専攻博士後期課程単位取得満期退学。博士(人間科学)。日本学術振興会特別研究員PDを経て、現在は国立民族学博物館外来研究員。
専門は文化人類学、平和研究、オセアニア地域研究。

主な論文に、「ソロモン諸島における真実委員会と在来の紛争処理― 紛争経験の証言聴取をめぐるグローバル/ローカルの緊張関係」(『文化人類学』第82 巻第4 号、2018年)、「平和実践としての逃げること―ソロモン諸島ガダルカナル島北東部の人びとによる二つの戦いへの対応」(『南方文化』第43 輯、2017 年)、How Did Solomon Islanders Live with Conflict?: A Case Study of Daily Life in Northeastern Guadalcanal, Solomon Islands(People and Culture in Oceania 30, 2015年)などがある。

NEWS・イベント・書評等

書評・紹介 2022年12月20日

『生成される平和の民族誌』が『アジア経済』にて紹介されました

『生成される平和の民族誌:ソロモン諸島における「民族紛争」と日常性』(藤井真一 著)の書評が、『アジア経済』63巻4号に掲載されました。評者は黒崎岳大先生です。


書評・紹介 2022年8月8日

『生成される平和の民族誌』の書評が掲載されました

『生成される平和の民族誌―ソロモン諸島における「民族紛争」と日常性』の書評が、『東南アジア研究』60巻1号に掲載されました。評者は谷口美代子先生(宮崎公立大学)です。
全文がjstageにて掲載されています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tak/60/1/60_75/_article/-char/ja/


書評・紹介 2022年2月24日

【新聞掲載】『生成される平和の民族誌』が図書新聞に掲載されました。

図書新聞 2022年2月26日発売2022年3月5日5号に書評が掲載されました。(評者:佐本英規先生、筑波大学)