全ての書籍 阪大リーブル/歴史・地理 グローバルヒストリーと戦争
紙 版電子版
古代から現代までの戦争を、グローバル、リージョナル、ナショナル、ローカルの四層から鳥瞰した意欲作。
出版年月 | 2016年04月01日 |
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ISBN | 978-4-87259-437-9 C1320 |
判型・頁数 | 四六判・360ページ |
定価 | 本体2,300円(税込2,530円) |
在庫 | 在庫あり |
第二次世界大戦時にイギリスで作られたこのポスターから、戦争がヨーロッパ全土、アメリカ、豪州、ソ連、中国、インド、植民地を動員する総力戦だったことがわかる。
本書は、古代から現代までの戦争を、グローバル、リージョナル、ナショナル、ローカルの四層から鳥瞰した、『グローバルヒストリーと帝国』に次ぐ意欲作。
序章 グローバルヒストリーと戦争 (秋田 茂・桃木至朗)
一 戦争と秩序形成―地域秩序から国際秩序へ
二 戦争と歴史認識、自意識・他者認識、世界像
三 本書の構成
第一章 戦後七〇年と二一世紀の東アジア―「戦争の語り」と歴史認識― (田中 仁)
一 東アジア地域秩序の再編と中国政治
二 一九九五年、東アジア・メディア空間の交錯
三 二一世紀日本における日中戦争史研究
四 戦後七〇年と東アジア
第二章 冷戦とアジアの経済開発 (秋田 茂)
一 冷戦と脱植民地化・経済開発
二 開発援助とインドの工業化―B・K・ネルーの活躍
三 ジョンソン政権と駐米大使B・K・ネルー―食糧危機への対応
四 「アジアの開発の時代」と主体性
第三章 太平洋戦争後の知的交流の再生―アメリカ研究者とロックフェラー財団― (中嶋啓雄)
一 原初的アメリカ研究コミュニティとロックフェラー家
二 戦後日米知的交流の起源
三 国際文化会館とロックフェラー財団―自由主義的国際主義と冷戦の狭間で
四 安保騒動と知的交流の動揺
五 一つの時代の終わり
第四章 第一次世界大戦と現代グローバル社会の到来―アメリカ参戦の歴史的意義― (中野耕太郎)
一 世界史の「断絶」―第一次世界大戦の衝撃
二 アメリカの参戦―ウィルソン外交とモンロー主義のグローバル化
三 アメリカの「海外領土」と総力戦
四 国内の「周縁」と総力戦― 人種マイノリティの戦争
五 もうひとつの国際主義と新国際秩序
第五章 軍事か経済か?
―帝政期ロシアの義勇艦隊に見る軍事力と国際関係― (左近幸村)
一 ロシア義勇艦隊とは何か
二 一九世紀の義勇艦隊
三 セルゲイ・ヴィッテの改革案
四 日露戦争後の方向転換
五 義勇艦隊の連続と断絶
第六章 山に生える銃―ベトナム北部山地から見る火器の世界史― (岡田雅志)
一 山地から見る火器の世界史
二 東部ユーラシアの火器の時代とその後
三 華人の世紀と山地における「火器の時代」
四 火器を通じた山地社会と国家の関係
五 山地の火器の帰結
第七章 もうひとつの「黒船来航」―クリミア戦争と大阪の村々― (後藤敦史)
一 グローバルからローカルまでの四つの層
二 中田治左衛門が生きた時代―ローカルな層
三 クリミア戦争と極東海域―グローバル/リージョナルな層
四 ロシアの対日外交とクリミア戦争―ナショナルな層 その一
五 幕府の大阪湾防備とディアナ号来航―ナショナルな層 その二
六 動員される村の人びと― 再びローカルな層
七 四つの層からみたクリミア戦争
第八章 財政軍事国家スウェーデンの複合政体と多国籍性―コイエット家の事績を中心に― (古谷大輔)
一 そこにスウェーデン人がいた―ゼーランディア城包囲戦
二 近世ヨーロッパにおける複合的な政治秩序と財政軍事国家
三 財政軍事国家と外来家門―コイエット家の事績
四 財政軍事国家を支える多国籍性―技術・情報・資金
五 財政軍事国家としての経験のヨーロッパへの還元―軍事と外交
六 財政軍事国家スウェーデンが提供した信用―軍事から学術へ
第九章 ポルトガル人はなぜ種子島へ上陸したのか (伊川健二)
一 日欧関係成立の世界史的意義
二 多国間関係史という方法
三 ポルトガル人たちはいつ、どこへ上陸したのか?
四 グローバルヒストリーのなかの一六世紀日本
五 ポルトガル人はなぜ種子島へ上陸したのか
第十章 「戦後五〇年」と「戦後七〇年」―抗元戦争後の大越(ベトナム)における国際秩序・国家理念・政治体制― (桃木至朗)
一 抗元戦争と大越陳朝の変容
二 世界戦争としてのクビライの大越侵攻
三 戦後の陳朝
四 陳朝国家の脱戦後レジーム
五 近世ベトナムにおける「伝統」の範型
第十一章 モンゴル帝国の東アジア経略と日中交流 (中村 翼)
一 西嶋定生「東アジア世界」論の視座
二 モンゴル時代以前の東アジア海域世界と日中交流
三 モンゴル帝国の東アジア経略と日本
四 元末明初の倭寇と「不臣之国」日本
五 日本と東アジアの「つながり」を考える
第十二章 「白村江の戦い」再考 (市 大樹)
一 白村江の戦いに関するイメージ
二 倭国の朝鮮半島への派兵
三 白村江の戦いの歴史的位置づけ
編者あとがき
執筆者紹介
秋田茂(アキタ シゲル)
1958 年生まれ。大阪大学大学院文学研究科・世界史講座・教授
(主要業績)『イギリス帝国とアジア国際秩序―ヘゲモニー国家から帝国的な構造的権力へ』(名古屋大学出版会、2003年)、『イギリス帝国の歴史―アジアから考える』(中公新書、2012 年)
桃木至朗(モモキ シロウ)
1955 年生まれ。大阪大学大学院文学研究科・世界史講座・教授
(主要業績)『中世大越国家の成立と変容』(大阪大学出版会、2011 年)、『わかる歴史・面白い歴史・役に立つ歴史― 歴史学と歴史教育の再生をめざして』(大阪大学出版会、2009 年)
田中仁(タナカ ヒトシ)
1954 年生まれ。大阪大学大学院法学研究科・教授
(主要業績)『1930年代中国政治史研究― 中国共産党の危機と再生』(勁草書房、2002年)、『共進化する現代中国研究― 地域研究の新たなプラットフォーム』(共編著、大阪大学出版会、2012 年)
中嶋啓雄(ナカジ マ ヒロオ)
1967 年生まれ。大阪大学大学院国際公共政策研究科・教授
(主要業績)『モンロー・ドクトリンとアメリカ外交の基盤』(ミネルヴァ書房、2002年)、“The Monroe Doctrine and Russia: American Views of Czar Alexander I and Their Infl uence upon Early Russian-American Relations,” Diplomatic History, Vol.31, Number 3 (June 2007)
中野耕太郎(ナカノコ ウタロウ)
1967 年生まれ。大阪大学大学院文学研究科・世界史講座・教授
(主要業績)『20 世紀アメリカ国民秩序の形成』(名古屋大学出版会、2015 年)、『戦争のるつぼ― 第一次世界大戦とアメリカニズム』(人文書院、2013 年)
左近幸村(サコン ユキムラ)
1979 年生まれ。新潟大学研究推進機構超域学術院・准教授
(主要業績)編著『近代東北アジアの誕生:跨境史への試み』(北海道大学出版会、2008 年)、「経済的相互依存関係の深化とヨーロッパ社会の変容」小野塚知二編『第一次世界大戦開戦原因の再検討:国際分業と民衆心理』(岩波書店、2014 年)
岡田雅志(オカダ マサシ)
1977 年生まれ。大阪大学大学院文学研究科・世界史講座・助教
(主要業績)『越境するアイデンティティ― 黒タイの移住の記憶をめぐって』(風響社、2014年)、「タイ族ムオン構造再考― 18‒19世紀前半のベトナム、ムオン・ロー盆地社会の視点から」『東南アジア研究』50 巻1 号(2012 年)
後藤敦史(ゴトウ アツシ)
1982 年生まれ。大阪観光大学国際交流学部・専任講師
(主要業績)『開国期徳川幕府の政治と外交』(有志舎、2015年)、「アメリカの対日外交と北太平洋測量艦隊―ペリー艦隊との関連で― 」『史学雑誌』124編9 号(2015年)
古谷大輔(フルヤ ダイスケ)
1971 年生まれ。大阪大学大学院言語文化研究科・准教授
(主要業績)近藤和彦編『歴史的ヨーロッパの政治社会』(共著、山川出版社、2008
年)、村井誠人編『スウェーデンを知るための60章』(共著、明石書店、2009 年)
伊川健二(イガワ ケンジ)
1974 年生まれ。成城大学共通教育センターほか非常勤講師
(主要業績)『大航海時代の東アジア― 日欧通交の歴史的前提』(吉川弘文館、2007年)、「フィリピンと日本、日西関係の黎明」「豊臣秀吉とスペイン」(坂東省次・川成洋編『日本・スペイン交流史』れんが書房新社、2010 年)
中村翼(ナカムラ ツバサ)
1984 年生まれ。大阪大学大学院文学研究科・共生文明論コース・助教
(主要業績)「日元貿易期の海商と鎌倉・室町幕府」『ヒストリア』241号(2013年)、「鎌倉禅の形成過程とその背景」『史林』97 巻4 号(2014年)
市大樹(イチ ヒロキ)
1971 年生まれ。大阪大学大学院文学研究科・日本史講座・准教授
(主要業績)『飛鳥藤原木簡の研究』(塙書房、2010年)、『すべての道は平城京へ―古代国家の〈支配の道〉― 』(吉川弘文館、2011 年)