全ての書籍 社会科学/文学/歴史・地理/哲学・思想・宗教 イラン立憲革命前夜の翻案文学
紙 版
検閲下の立憲革命期、イランの近代化/西欧化に重要な役割を果たした西欧文学の翻案(創作的要素を含む翻訳)の営為を考察。
| 出版年月 | 2026年01月27日 |
|---|---|
| ISBN | 978-4-87259-833-9 C3098 |
| 判型・頁数 | A5判・220ページ |
| 定価 | 本体4,500円(税込4,950円) |
| 在庫 | 未刊・予約受付中(近刊) |

翻訳がひらいたペルシア文学の新たな地平
イラン立憲革命(1905-11)によって初めて憲法が制定され、王政から立憲君主制に移行したイラン。この時期のイランの近代化/西欧化の過程において重要な役割を果たしたのが、西欧文学の翻訳や翻案(創作的要素を含む翻訳)である。検閲下のイラン立憲革命期、これらの作品は亡命/移住した知識人によって国外で出版され、「立憲革命文学」の一つとしてイランの人々の改革への気概を高めた。本書では、イラン立憲革命期の歴史的・社会的背景および文学史を俯瞰した上で、代表的な翻案文学3作品『エスファハーンのハージーバーバーの冒険』(1905)、『72派の宗教談義』(1894)、『アフマドの書』(1893, 1894, 1906)を詳細に分析。イラン文学の近代化の過程を辿るとともに、イランにおける翻訳や翻案の特異性に光を当てる。言語的・文化的転換点としての近現代翻訳・翻案文学作品に注目し、ペルシア文学研究に新たな示唆を与える革新的な研究書。
序章 本書の視座と構成
第1章 イラン立憲革命とペルシア文学
1. 19 世紀ガージャール朝ペルシアの歴史概要
2. ペルシア文学史の概要と文学の近代化
3. 翻訳と翻案
第2章 当時の言論状況と3作品の概要
1. 立憲革命期前夜のイランの出版状況:検閲、出版、新聞、国内外の知識人たち
2. 3作品の構成およびあらすじ
2-1.『エスファハーンのハージーバーバーの冒険』構成とあらすじ
2-2.『72 派の宗教談義』構成とあらすじ
2-3.『アフマドの書』構成とあらすじ
第3章 『 エスファハーンのハージーバーバーの冒険』(1905)
1. 先行研究と作品への評価
2. ミールザー・ハビーブ・エスファハーニーの生涯と作品
3. 作品の原作と背景
4.『 エスファハーンのハージーバーバーの冒険』解題
4-1. 専制政治に対する抵抗の鼓舞
4-2. 実在した人物への批判
4-3. 役人の悪行
4-4. 西欧人の外見を論う表現
4-5. 役人の外見を論う表現
4-6. 西欧医学に対する忌避感
4-7. 公文書における誇張、改変
4-8. イスラームに対する批判的な姿勢と宗教的不寛容への批判
4-9. 宗教的儀礼に対する皮肉
4-10. 隣国との比較
5. 小結
第4章 『72 派の宗教談義』(1894)
1. 先行研究
2. ミールザー・アーガーハーン・ケルマーニーの生涯と作品
3. 作品の原作と背景
4. ガージャール朝時代の宗教的混乱
5.『72派の宗教談義』解題
5-1. 宗派間の論争に対する批判
5-2. 狂信に対する批判的態度
5-3. 2人の理想的知識人
6. 小結
第5章 『アフマドの書』(1893,1894,1906)
1. 先行研究と作品への評価
2. アブドゥルラヒーム・ターレボフの生涯と作品
3.『アフマドの書』成立の背景:その出版および『エミール』、『なぜこうなるのか―自然学と天文学の簡単な話―』との関係
4.『アフマドの書』解題
4-1. ターレボフの歴史観:イラン民族主義的姿勢
4-2. 迷信とペルシア文字の現状についての批判
4-3. 理想的未来像
5. 小結
終章 翻訳と創作の隙間地
参考文献・あとがき・人名索引・事項索引
木下実紀(キノシタミキ)
1993年長野県生まれ。大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程修了。2024年4月より京都大学白眉センター・文学研究科特定助教。専門はペルシア文学・イラン地域研究。主な論文に「アブドゥッラヒーム・ターレボフ 『アフマドの書』(1893-94, 1906) にみられる西欧近代的理想郷」(『世界文学会』136: 74-83, 2022)、「宗教問題を物語で語る──ミールザー・アーガーハーン・ケルマーニー『72派の宗教談義』(1894)──」(『イラン研究』 18: 80-101. 2022)などがある。現在、『アフマドの書』の邦訳に取り組んでいる。











