紙 版
戦前期大阪の機械工業業界において重要な地位を築いた9名の野心的創業者のケーススタディを通し、企業発展の主体的条件を考察。
出版年月 | 2025年03月31日 |
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ISBN | 978-4-87259-836-0 C3034 |
判型・頁数 | 四六判・294ページ |
定価 | 本体4,400円(税込4,840円) |
在庫 | 在庫あり |
「大大阪」の時代、大阪は「商都」、また「東洋のマンチェスター」として名をはせたが、同時に「工都」であり、機械金属工業が集積する都市でもあった。本書では、戦前期大阪の機械工業業界において重要な地位を築いた企業の経営実態を明らかにし、9名の野心的な創業者のケーススタディを通して、企業発展の主体的条件を考察する。
本書が取り上げる企業者は次の9名である。
・若山瀧三郎(若山鉄工所)
・溝口良吉(溝口歯車工場)
・酒井寛三(酒井寛三商店)
・椿本説三(椿本チエィン製作所)
・桑田権平(日本スピンドル製造所)
・小林愛三・品川良造兄弟(大阪変圧器)
・山田多計治(大阪機械製作所)
・柴柳新二(恩加島鉄工所、日本鍛工)
「大大阪」の時代は企業家精神が横溢していた時代でもあった。本書が取り上げる魅力的な創業者たちは近代大阪の開放性と自立性を体現し、大阪を舞台に精力的な企業者活動を展開する。大大阪が著しい経済発展を成し遂げた要因とは何か、そのプロセスを経営史・企業者史の観点から検討し、現代大阪が学ぶべき歴史的教訓を提示する。
序章 創業者型企業家の継起的出現
はじめに
一 独立開業の社会的意義
二 本書の構成
第一章 若山瀧三郎と若山鉄工所
はじめに
一 創業から第一次世界大戦期の拡大へ
二 一九二〇年代の困難と挫折
三 復活と一九三〇年代の成長
四 瀧三郎没後の大阪若山鉄工所―戦時期―
おわりに
第二章 溝口良吉と溝口歯車工場
はじめに
一 創業から第一次世界大戦期まで
二 設備機械の充実―一九二〇年代―
三 日本一の歯車工場へ―一九三〇年代―
四 戦時期の歯車業界
おわりに
第三章 酒井寛三と酒井寛三商店
はじめに
一 独立創業まで
二 第一次世界大戦期
三 順調な経営展開―一九二〇年代―
四 輸出への注力と投資活動―一九三〇年代―
五 戦時期
おわりに
第四章 椿本説三と椿本チヱィン製作所
はじめに
一 独立まで
二 椿本工業所・椿本商店の設立
三 自転車用チェーンから機械用チェーンへ―一九二〇年代―
四 新製品開発の加速―一九三〇年代―
五 戦時統制下の椿本チヱィン製作所
おわりに
第五章 桑田権平と日本スピンドル製造所
はじめに
一 生誕から大阪砲兵工廠退官まで
二 川崎造船所入所からスピンドルの製造開始まで
三 日本スピンドル製造所の経営展開
おわりに
第六章 小林愛三・品川良造と大阪変圧器
はじめに
一 創業まで
二 柱上変圧器専門メーカーとしての成長―一九二〇年代―
三 長引く大手電機メーカーとの競争―一九三〇年代―
四 電気機械カルテルと大阪変圧器
五 電気溶接機への進出
六 戦時期の大阪変圧器
おわりに
第七章 山田多計治と大阪機械製作所
はじめに
一 独立まで
二 多品種少量生産の継続―一九二〇年代―
三 紡機生産の拡大
四 積極的企業買収の展開―一九三〇年代―
五 山田多計治・本田菊太郎・津上退助の企業者活動―戦時期―
おわりに
第八章 柴柳新二と恩加島鉄工所・日本鍛工
はじめに
一 生い立ちと久保田鉄工所での活動
二 恩加島鉄工所の設立
三 戦時下における日本鍛工の経営発展
おわりに
終章 企業者精神・技術・人的ネットワーク
あとがき/企業者と大阪経済の略年譜/索引
沢井 実(サワイミノル)
1953年、和歌山県生まれ。1978年、国際基督教大学教養学部社会科学学科卒業。1983年、東京大学大学院経済学研究科第二種博士課程単位取得退学。博士(経済学、大阪大学)。東京大学社会科学研究所助手、北星学園大学経済学部専任講師・助教授、大阪大学経済学部助教授を経て、1998年大阪大学経済学研究科教授。2016年より南山大学教授(2022年まで)。元経営史学会会長。専門は日本経済史、日本経営史。大阪大学名誉教授。現在、住友史料館館長。
【主な業績】
『近代日本における企業家の諸系譜』(共編、大阪大学出版会、1996年)
『近代大阪の工業教育』(大阪大学出版会、2012年)
『近代日本の研究開発体制』
(名古屋大学出版会、2012年、日経・経済図書文化賞受賞)
『近代大阪の産業発展』(有斐閣、2013年)
『八木秀次』(吉川弘文館、2013年)
『日本帝国圏鉄道史』
(名古屋大学出版会、2024年、鉄道史学会住田奨励賞受賞)
など多数