全ての書籍 人文科学/歴史・地理/哲学・思想・宗教 旅するカミサマ、迎える人々
紙 版
伊勢大神楽を中心に、現代に受け継がれる各地の家廻り行事と迎える風習に着目。フィールドワークから家廻り芸能の現在に迫る。
出版年月 | 2025年01月10日 |
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ISBN | 978-4-87259-831-5 C1039 |
判型・頁数 | A5判・272ページ |
定価 | 本体3,300円(税込3,630円) |
在庫 | 在庫あり |
日常空間にカミサマ、芸能者がやってくる
「門付け」研究から「家廻り芸能」研究へ!
家々を廻って戸口や座敷で芸を演じる「門付け」の芸能。瞽女、万歳、琵琶法師などの多様な旅暮らしの芸能者は今ではほとんど見られなくなってしまったが、伊勢大神楽は現在も本州西部を中心に、年間を通じて旅を続け、地域では彼らを迎える風習がある。本書では、伊勢大神楽を中心に、フィールドワークから家廻り芸能の現在に迫る。現代に受け継がれる、各地の家廻り行事に着目し、それぞれに共通点も見出しながら、家を訪ねる芸能がなぜ大事にされてきたのかを考えたい。
序 「家廻り芸能」研究の提案 ――韓国の芸能との比較的視点から
家廻り芸能との出会い/日常空間に芸能者がやってくる/穀物やお金をもらうことの意味/「門付け」研究から「家廻り芸能」研究へ/専業芸能集団の比較研究〜男寺堂と伊勢大神楽〜/ふたつの「まわす」/本書で扱う芸能の条件/家廻り芸能の分類を試みる/今、なぜ「家廻り芸能」か/本書の構成
第一章 伊勢大神楽と現代日本を歩く
伊勢大神楽とは何なのか
家を廻る獅子舞の風景/日本と韓国の放浪芸への視点/道を行く「プロ」の再発見/小豆島での初調査/近江の正月行事/風の人と土の人/符牒について/わしらはわしら/総舞を見なければわからない/オシシサンはカミサマそのもの/獅子頭の最終目的地/歩き旅に特化した楽器たち/笛の音が伝えてくれること/笛は芸能交流の媒体(メディア)/年に一度のお伊勢参り/長持ち大解剖
地域の人々とのかかわり
モナカの教訓/四季の移ろいを渡り歩く/備前のシシと獅子の対決/瀬戸大橋のかかる島で/神さんの終活/島に吹く新しい風
コロナ禍を通じて見えたこと
初期コロナ禍の混乱/神楽は精神安定剤/神楽と薬と流行り病/リモート厄祓いはアリか/獅子舞とカメラを止めるな
人々の記憶に残る伊勢大神楽
お金では買えないご縁、カグラヤド /檀那場の再開発/松井さんの想い出ばなし/朝鮮から来た神楽師の墓/真似事に心血をそそぐ加茂神楽/ニセモノとホンモノのあいだ/ひとつとせ、ひとつお伊勢の大神楽/先祖との邂逅/追悼・三木浩一さん、タミさん
国際交流と公演企画 ――現代的な伊勢大神楽の解釈
韓国公演に見る伊勢大神楽の「現場性」/お祓い廻りは海を越える/「みんぱく村」での社会実験/カグラの動くデータベース
第二章 フィールドノート 家を廻る芸能津々浦々
1 黒森神楽
2 答志島獅子舞
3 八代妙見祭獅子舞楽
4 小村井香取神社獅子巡行
5 福野横町獅子舞
6 湖山茶屋麒麟獅子舞
7 川内鹿踊
8 じゃんがら念仏踊
9 中堂寺六斎念仏
10 吉浜のスネカ、権現様、ウタイコミ
11 浦浜念仏剣舞と韓国農楽の国際交流
12 阿波木偶まわし
あとがき・初出一覧・著者紹介
神野知恵(カミノチエ)
1985年神奈川県生まれ。2016年東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程音楽文化学修了。博士(音楽学)。
人間文化研究機構研究創発センター/国立民族学博物館特任助教・人文知コミュニケーターを経て、現在、岩手大学人文社会科学部人間文化課程准教授。専門は民族音楽学、民俗芸能研究。
主な業績
『韓国農楽と羅錦秋─女流名人の人生と近現代農楽史』(ブックレット《アジアを学ぼう》43)、風響社、2016年
「人に出会うための民族音楽学―韓国、日本、そして世界へ」『音楽を研究する愉しみ─出会う、はまる、見えてくる』(ブックレット《アジアを学ぼう》別巻18、共著)、風響社、pp.40-55、2019年
「それでも、獅子は旅を続ける─伊勢大神楽の回檀の記録」、『季刊民族学』45(1)、千里文化財団、pp.83-93、2021年