全ての書籍 人文科学/語学 現代中国語における“是”とモダリティ
現代中国語における“是”とモダリティ
中田聡美 著
紙 版電子版
多様な用法を持ち、多くの中国語学習者を悩ませる“是”。
謎多き“是”の本質を、モダリティの観点から解明する。
出版年月 | 2024年03月31日 |
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ISBN | 978-4-87259-796-7 C3080 |
判型・頁数 | A5判・272ページ |
定価 | 本体5,200円(税込5,720円) |
在庫 | 在庫あり |
“是”は中国語学習者が初期段階で学習する語の一つである。“我是日本人。”(私は日本人だ。)の用例に代表される、英語のbe動詞のような用法があるが決してそれだけではない。学習者は学習を進めるにつれ、最初に習得したものとは大きく異なる“是”の様々な用法に出会う。ところが“是”は教科書の解説では説明しきれない多様な性質を持つため、“是”に悩まされる学習者は珍しくない。
本書では現代中国語で多用される“是”及び“是”によって構成される形式について、モダリティの観点から体系的に考察を行い“是”の本質を明らかにすることを試みる。モダリティ関連の研究を概観し、モダリティの定義を踏まえたうえで“是”の形成するいくつかの文法形式を取り上げ、分析を行った。
中国語学の分野において“是”及び“是”の構成する言語形式に関する研究は少なからず存在するが、モダリティの観点からの体系的な研究はなされていない。日本の中国語研究の伝統を継承し、日本語のモダリティの枠組みを参照し中国語研究に取り入れることで、統語的側面からの研究では明らかにされてこなかった“是”の特性を論じる画期的な一冊。
まえがき
第1章 序論
1.1 現代中国語文法体系における“是”
1.1.1 1950年以前の研究
1.1.2 1950年以降の研究
1.2 本書の背景及び目的
1.3 本書の構成
第2章 モダリティに関する研究概観
2.1 研究の背景
2.1.1 moodについて
2.1.2 modalityについて
2.1.3 「陳述論」から「モダリティ」へ
2.1.4 「対事的モダリティ」と「対人的モダリティ」
2.2 “语气”と“情态”について
2.2.1 1950年以前の“语气”の扱い
2.2.2 “语气”から“情态”へ
2.3 本書の立場
第3章 語用論的観点から見た“是+VP/AP”
3.1 “是+NP”と“是+VP/AP”
3.2 “是+VP/AP”のモーダルな意味
3.2.1 「是認」を表す場合
3.2.2 「訂正」を表す場合
3.2.3 「原因説明」を表す場合
3.2.4 「目的説明」を表す場合
3.2.5 「確認」を表す場合
3.2.6 「話し手明示マーカー」の場合
3.3 複文における“是+VP/AP”
3.3.1 “不是P,(而)是Q”
3.3.2 “是P,还是Q”
3.4 「断言・断定」義と現実モダリティ“是”
3.5 第3章のまとめ
第4章 対事的モダリティ“是不是1”と対人的モダリティ“是不是2”
4.1 “是不是+NP”と“是不是+VP/AP”
4.2 “是不是”に関する先行研究
4.3 文中型“是不是+VP/AP”と文末型“VP/AP+是不是”
4.3.1 文中型と文末型の異同
4.3.2 文中型と文末型の構文的意味
4.4 文中型“是不是+VP/AP”について
4.4.1 文中型における命題の已然・未然
4.4.2 文中型の肯定/否定への傾き
4.4.3 文中型と“到底”、“究竟”の共起関係
4.4.4 口語における文中型
4.5 文末型“VP/AP+是不是”について
4.5.1 文末型におけるモーダル・フレーム
4.5.2 文末型と談話成分の共起関係
4.5.3 ディスコースマーカーとしての“是不是”
4.6 第4章のまとめ
第5章 モーダル・フレームとしての“不是……吗”
5.1 “不是……吗”のバリエーション
5.2 “不是……吗”に関する先行研究
5.3 “不是……吗”の構文的意味と語用論的機能
5.3.1 「想起」を表す場合
5.3.2 「疑念」を表す場合
5.3.3 「反駁」を表す場合
5.3.4 「弁解」を表す場合
5.3.5 「驚き、意外性」を表す場合
5.3.6 複文を形成する場合
5.4 “不是……吗”と前方/後方モダリティ成分
5.4.1 前方モダリティ成分“不(是)……”
5.4.2 後方モダリティ成分“……不是”
5.4.3 “这不(是)……”から“这不”まで
5.5 “不是……吗”とモダリティ成分の共起関係
5.5.1 “不是……吗”と“也”、“都”、“就”
5.5.2 “不是……吗”と“还”
5.5.3 “不是……吗”と“可”
5.5.4 “不是……吗”と“岂”
5.5.5 “不是……吗”と“呢”、“的”
5.6 第5章のまとめ
第6章 二音節副詞に後続する“是”の意味機能
6.1 “二音節副詞+是+NP”と“二音節副詞+是+VP/AP”
6.2 “副詞+是”に関する先行研究
6.3 二音節副詞が“是”と共起する場合
6.3.1 副詞+原因説明“是”
6.3.2 副詞+断定“是”
6.3.3 副詞+状況・状態“是”
6.3.4 副詞+文修飾副詞形成“是”
6.3.5 副詞+焦点マーカー“是”
6.4 二音節副詞が“是”と共起しない場合
6.4.1 未然事態の場合
6.4.2 否定の場合
6.5 能願動詞、動詞に後続する“是”
6.5.1 能願動詞“应该”+“是”
6.5.2 動詞“估计”+“是”
6.6 第6章のまとめ
第7章 話し手の捉え方と“場所詞+是/有+NP”
7.1 中国語における〈存在〉形式
7.2 “LOC+是+NP”に関する先行研究
7.2.1 「唯一性」、「排他性」の有無
7.2.2 「存在」情報の新旧
7.3 “LOC+是/有+NP”と捉え方
7.3.1 “LOC+是/有+X”の異同
7.3.2 “LOC+是/有+X”の用例分析
7.4 “LOC+是/有+X”と数量詞の共起
7.4.1 単文としての“LOC+是/有+X”
7.4.2 テクストにおける“LOC+是/有+X”
7.5 “LOC+是/有+X”と形容詞、副詞の共起
7.5.1 “LOC+是+X”と共起する形容詞、副詞
7.5.2 “LOC+有+X”と共起する副詞
7.5.3 “LOC+是/有+X”と共起する副詞
7.6 “LOC+是+X”の拡張形式
7.7 第7章のまとめ
第8章 おわりに
参考文献
あとがき
索引
中田聡美(ナカタ サトミ)
大阪大学大学院人文学研究科外国学専攻 准教授
大阪大学大学院言語文化研究科言語社会専攻博士後期課程修了 博士(言語文化学)
専門は現代中国語文法