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外来語の基本語化

現代新聞「叙述語彙」への進出

金愛蘭

紙 版電子版

外来語の基本語化現象を著者作成の大規模新聞コーパスに基づく計量的な調査と特定の外来語に注目した事例研究から考察する。

出版年月2024年06月28日
ISBN978-4-87259-784-4 C3080
判型・頁数 A5判・310ページ
定価本体5,200円(税込5,720円)
在庫在庫あり
内容紹介
目 次
著者略歴

「トラブル」「ケース」「チェック」「ルール」……抽象的な意味を表す外来語の基本語化の実態を言語内的に解明
20世紀後半~21世紀初頭の新聞コーパスを調査し、和語や漢語の類義語との関係や、用いられる文章・談話の特徴なども視野に入れながら具体的に記述する(帯文より)


本書は、これまで周辺的な存在と位置付けられてきた外来語が、和語や漢語の類義語があるにもかかわらずなぜ語彙の中心部に移行して「基本語化」するのかを、著者自ら作成した新聞コーパスに基づく計量的な調査と、特定の外来語に注目した事例研究から考察するものである。抽象的な意味をあらわす外来語の基本語化および叙述語化の現象を、20世紀後半の新聞文章の変化とも関連付けつつ、意味の拡大と叙述パタンの獲得という視点から明らかにした。

序章 通時的新聞コーパスによる「外来語の基本語化」研究
 1 研究の背景
 2 研究の目的
 3 先行研究
 4 通時的新聞コーパスの作成
  4.1 通時的コーパスの必要性
  4.2 『毎日新聞経年コーパス』(第0 版~第4 版)の作成
  4.3 コーパスの特徴
 5 本書の構成

第1部 基本語化の量的概観

第1章 基本語化候補語の抽出
 1 はじめに
 2 『毎日新聞経年コーパス』(第1 版)の語彙調査
 3 外来語の増加傾向
 4 増加傾向にある外来語(基本語化候補語)の抽出
 5 基本語化候補語の意味的構成

第2章 基本語彙構造における外来語の進出領域
 1 はじめに
 2 基本語彙の分類と構造
 3 分類結果
 4 基本語彙構造における外来語の進出領域

第3章 類義語との量的関係から見る基本語化
 1 はじめに
 2 類義語選定の方法
 3 基本語化の量的傾向
  3.1 類義語を上回る外来語
  3.2 類義語に近づく外来語
  3.3 類義語に及ばない外来語

第2部 意味の拡大から見た基本語化

第4章 外来語「トラブル」の基本語化(1)
 1 はじめに
 2 抽象的な基本外来語「トラブル」
 3 「トラブル」の基本語化の量的な側面
 4 「トラブル」の意味・用法
  4.1 ヒトとヒトとのトラブル
  4.2 モノのトラブル
  4.3 モノゴトのトラブル
  4.4 意味・用法間の関係
 5 「トラブル」の意味・用法の拡大
 6 「トラブル」の基本語化の意味的な側面
  6.1 新聞において重要な《事態》を「幅広く」表す
  6.2 新聞において重要な《事態》を「概略的に」表す
  6.3 同義語の不在
  6.4 新聞文体の「概略化」傾向
 7 おわりに

第5章 外来語「トラブル」の基本語化(2)
 1 「トラブル」の基本語化
 2 類義語の経年的調査の必要性
 3 類義語の使用量の変化
 4 「トラブル」の基本語化と類義語

第6章 外来語動名詞「チェック」の基本語化
 1 はじめに
 2 使用量の増加
 3 用法の拡大
 4 意味の拡大
 5 意識調査との比較
 6 おわりに

第7章 外来語「クレーム」の基本語化とその“挫折”
 1 はじめに
 2 外来語「クレーム」とその類義語の量的変動
 3 “挫折” の背景・要因
  3.1 〈経済〉から〈非経済〉への意味の拡大
  3.2 マイナスの感情的意味の付着
  3.3 他の動詞句やサ変動詞化の可能性
 4 “挫折語” から見る基本語化

第3部 叙述パタンの獲得から見た基本語化

第8章 外来語「ケース」の基本語化(1)
 1 はじめに
 2 「ケース」の基本語化の確認
 3 「ケース」の類義語と類義用法
 4 「ケース」が多用される形式
  4.1 単独で(=修飾部をとらない)
  4.2 合成語の構成要素として
  4.3 名詞句における被修飾語として
  4.4 連体修飾節構造における被修飾語として
 5 節構造における「ケース」および類義語の意味・用法
  5.1 コトガラの内容
  5.2 叙述のされ方
 6 おわりに

第9章 外来語「ケース」の基本語化(2)
 1 はじめに
 2 使用量の推移
 3 形式の推移
 4 「ケース」の節構造用法の拡大

第10章 外来語「ルール」の叙述語化
 1 外来語の基本語化と叙述語化
 2 叙述型の獲得過程
 3 対象と資料
 4 類義語との量的な関係
 5 各年新出の叙述型
 6 叙述型の拡張過程
 7 さらなる検討に向けて

第11章 文章構成機能から見た外来語の基本語化
 1 外来語の基本語化の文章論的要因
 2 資料:『毎日新聞経年コーパス』(第2版)
 3 調査1: 指示語句
 4 調査2: 同格連体名詞
 5 文章構成機能の獲得による基本語化

第12章 外来語の氾濫・濫用と叙述語化
 1 外来語の「氾濫」「乱用」
 2 外来語の「文化的占領」
 3 外来語の「基本語彙への侵入」
 4 抽象的な意味を表す外来語
 5 外来語の「叙述語化」

あとがき
文献
索引

金愛蘭(キムエラン)

日本大学文理学部 准教授

韓国(釜山)出身。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了,博士(文学)。国立国語研究所特別奨励研究員,早稲田大学インストラクター,東京外国語大学講師,広島大学講師・准教授を経て,現在日本大学文理学部准教授。専門は日本語学,日本語教育学。
主な業績
「外来語『トラブル』の基本語化─ 20 世紀後半の新聞記事における─」(『日本語の研究』2 巻2号,2006 年),『20 世紀後半の新聞語彙における外来語の基本語化』(『阪大日本語研究』別冊3,2011 年),『コーパスで学ぶ日本語学 日本語の語彙・表記』(朝倉書店,共著,2020 年),「現代『語彙史』研究のためのコーパスと統計─『毎日新聞経年コーパス』による語の増減傾向の分析─」(『計量国語学』33 巻4 号,2022 年)