多元性の都市イスタンブル
近世オスマン帝都の都市空間と詩人、庶民、異邦人
在庫あり
宮下 遼 著
A5判 436ページ 上製
定価5800円+税
ISBN978-4-87259-593-2 C3022
奥付の初版発行年月:2018年02月
内容紹介
東西の文物が行き交う国際貿易として、そしてオスマン朝という巨大国家の帝都としての求心力を誇った、近世イスタンブル。本書はこの都市空間にほぼ同時期に居合わせた観察者たちを、帝国文化を担うオスマン詩人という「文化的選良層」、都市の商工業者によるムスリム、非ムスリムの「庶民層」、そして旅行者、滞在者という「異邦人」に分類し、彼らが残した記述からイスタンブルの都市像を多角的に抽出する。
目次
序章 オルハン・パムクの憂愁の向こう
第一章 視線の交錯する都市
1 近世イスタンブルの成立
2 近世イスタンブルへの眼差し
3 視線の交錯点
第二章 近世イスタンブルを歩く
1 近世「帝都圏」
2 近世イスタンブルの都市空間
第三章 詩人の眼差し、楽土の都
1 オスマン詩人とは何者か
2 世界に唯一にして似たもの無き都市
3 天の園に比せられる楽土の都
第四章 支配者の眼差し、下郎の巷
1 当世批判と庶民
2 酒場、珈琲店、メジリス:都市の社会的結節点への眼差し
3 庶民の生業への眼差し
4 下郎の巷の紳士たち
5 オスマン帝国の文化的選良層における帝都:「楽土の都」と「下郎の巷」
第五章 庶民の眼差し、俗信の都
1 庶民の世界を覗くには
2 アヤズマとエユプ伝説
3 帝都の狂人たち
4 奇譚の憑代、奇物
5 日常生活の裏に潜む俗信の都
第六章 異邦人の眼差し、箱庭の中の冒険
1 西欧人とオスマン帝都イスタンブル
2 異教・キリスト教古代への眼差し
3 「トルコ帝国」の異文化への眼差し
4 voyageとtourの狭間、箱庭の中の冒険
終章 多元性の都市イスタンブル
1 歴史的重層性に拠った多元的言説空間
2 多元的言説空間の終焉
著者略歴
宮下 遼(著)(みやしたりょう)
1981年、東京生まれ。
東京外国語大学外国語学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。
現在は大阪大学言語文化研究科准教授。
専門はトルコ文学(史)。
著書に『無名亭の夜』(講談社)、訳書にオルハン・パムク『私の名は赤』、『僕の違和感』、『雪』、『無垢の博物館』(いずれも早川書房)、ラティフェ・テキン『乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺』(河出書房新社)などがある。
(上記内容は本書刊行時のものです。)
